#20『Airbnbが再定義する空き家』
――春野町で始まるRelabという試み

「ただの旅」じゃ、もう物足りない。
旅先で感じる風の匂い。路地裏の名前もない小さな商店。畳に寝転んで、窓の外に揺れる木漏れ日をぼんやり眺める時間。そんな何気ない日常の一コマが、いつしか旅の主役になった。そんな折に、Airbnbの「AKIYA DESIGN PROJECT」という大きな動きを知った。
全国の空き家を、ただの宿泊施設ではなく、「地域の魅力と暮らしを体験できる場所」として再編集し、建築家や地域住民とともに新しい旅のかたちを創り出すプロジェクトだ。

この考え方は、2025/7/20(日)から始まる”古民家月一開放イベントRelab”の目指す姿とまさに共鳴する。ただの“古民家イベント”を超えて、訪れた人たちと地域が出会い、関係を紡ぐ“場所”になることが目的だ。「町の未来と出会う装置」として、もっと大きく広がっていくはずだし、今回のAirbnbのプロジェクトが始まるのは、時代がそっちに向かっているという確固たる事実なワケだ。それらを踏まえた上で、みんなで”旅をデザインする”という視点から企画会議をRelabイベント時にやりたいと考えている。

■ 1|空き家が、“地域の舞台”に変わるプロジェクト
Airbnbが提案する「空き家デザインプロジェクト」は、空き家をただの不動 産ではなく、体験の舞台として再設計する取り組み。特に印象的なのは、
「宿泊施設としての空き家」ではなく、「地域の魅力を体験できる場」として捉えていること。
Airbnbは、もともと2008年にアメリカ・サンフランシスコで誕生し、民泊マッチングサービスからスタート。現在では190カ国以上で展開し、世界中の個人がホストとして自宅や別荘を「泊まれる場所」として登録できるプラットフォームに成長している。このAirbnbが目指してきたのは、
「その土地の暮らしに入り込むような旅」「観光ではなく、日常の延長線上にある非日常の体験」
地域の住民と料理をしたり、集落の祭りに参加したり。その土地に“暮らすように泊まる”ことで、旅行者と地域のあいだに関係性を生み出すことが、Airbnbの思想の根底にある。この「空き家デザインプロジェクト」は、建築家・地域住民・行政が連携しながら、旅行者に“もう一つの暮らし”を提供するという、旅の再定義と地域の再編集を同時に行う挑戦でもある。
この根底には、
空き家を「課題」ではなく「余白」と捉えなおす視点
宿泊=サービスではなく、「関係性をつくる体験」と捉える価値観
デザインや物語の力で、“まちの可能性”を浮かび上がらせる思想が息づいている。

■ インバウンド観光客が求める「旅の体験価値」とは?
近年、インバウンド観光の本質的なニーズは「モノ消費」から「コト消費」へと大きく変化している。ただ観光地を訪れるだけでな く、その土地の暮らしや文化に触れ、地元の人と交流し、「旅先でしか味わえない体験」を求めているのだ。その意味では、空き家を単なる宿泊施設と捉えるのではなく、「暮らしの温度を感じる体験の舞台」として活用することは、今のインバウンド需要にまさにマッチしている。これがAirbnbの「AKIYA DESIGN PROJECT」が目指す思想であり、僕たちがこれから始める古民家イベントや古民家プロジェクトで作りたい世界とも、ガッツリ深くリンクしている。

■ 2|Relabが実践する、ローカルでの“問い直し”
LIFE PROJECT HARUNOがこれから仕掛ける”Relab”は、まさにこのAirbnb的な発想を地域目線で実装している場所だ。Relabでは、「空き家を使って何かをする」ことが目的ではない。むしろ、その古民家があるからこそ、
“町の未来に関わりたい人が、たまたま集まってしまう”そんな偶然と必然の交差点を生み出すことが目的になっている。
Relabは、月に一度だけ開く実験の場。宿でもカフェでもない。だけど、語ることも、展示することもできる。そのすべてが、「町に関わるための入り口」として設計されている。

■ 3|空き家 × デザイン × 関係人口 という思想
Relabも、Airbnbの空き家プロジェクトも、共通するものがある。それは——
空き家を「建物」ではなく、「人と町の関係を再編集する装置」として扱っている点。
つまり、「泊まる場所」ではなく「問いかける場所」。観光地ではなく、町の未来を一緒に考える“場所性”をつくること。
泊まるではなく、関わる
サービスではなく、共創
再生ではなく、再定義
Relabは、“空き家活用”という枠を超えて、町の未来にひらかれた舞台になっている。

【まとめ|Relabという実験が、旅の自由を拡張していく】
空き家をどう生かすか?それは「利活用」や「収益化」の話だけじゃない。むしろ、「この町とどう関わるか」「どんな未来を一緒に考えられるか」——そんな問いの入り口にすぎない。
Relabは、“旅の途中で町の未来と出会う”という可能性を実装している場所。そこでは、誰かの一泊の滞在が、町の未来につながっていく。
そしてこれは、春野町という一つのローカルから始まった新しい旅のかたちと、関係のデザインの実験だ。Relabはこれから、「古民家の有効活用」をテーマに、町の人・旅人・関係者みんなで考える企画会議を月に一度開いていく予定だ。「誰が住むか」じゃなくて、「どんな価値を宿すか」を考える。「リノベするか」じゃなくて、「何を交差させる場所にするか」を考える。そんな問いを持ち寄り、交差し合う時間をRelabはこれからつくっていく。
いままさに、そのためのプレゼン資料をぽちぽちとつくっている最中だ。
町の余白に、どんな未来を描けるか——その実験は、すでに始まっている。