『月一限定古民家開放 Relab』
──名前のない実験が、はじまる。

春野町の町の人たちが通っていた小さな病院がある。別に有名な建築家が設計したわけでもないし、文化財に指定されているような歴史があるわけでもない。

けれど、不思議と落ち着く場所だった。診察を終えて渡されたシロップの 味や、靴を脱いで上がる廊下の冷たさ。タバコが大好きだった先生のおじいちゃん、大きな声で名前を呼んでくれて、頭をなでなでしながらニコニコの笑顔で迎えてくれた受付のおばちゃんたち。そういうものが、自分の幼い時の記憶の底にうっすらと残っている。
お世話になったあの旧岡本医院がいま、「Relab(リラボ)」という名のもとに、生まれ変わろうとしている。
ただし、カフェでも、旅館でも、アトリエでもない。言ってしまえば、まだ決めていない、みんなで価値を創る場所だ。

Relab=Re: + Lab
つまりは、“再び実験する場所”。春野で、空き家をどうするか?という問いに、ありきたりな答えを出すつもりは、こちとらまったくない。
「とりあえず泊まれる場所をつくろう」
──そんな言葉に、少しだけ反射的に首をかしげた僕たちは、ならばこの建物そのものを“問いに変える”ことにした。
人が集まる理由が必要なら、つくればいい。面白がる人が必要なら、まず自分たちが動けばいい。足りないものは、誰かが持ってきてくれると信じて、7月20日、”新たな価値を生み出す”をテーマに掲げて、ついにRelabの幕が開く。

誰かを集める日ではなく、誰かと出会う日
この一発目は、お祭りのように人をたくさん呼ぶ日じゃない。“参加者”を求めているわけでもない。
この日は、「一緒に仕掛ける側」に回りたい人と出会う日だ。
この場所にピンときた人。暮らしに何か物足りなさを感じている人。街の中では言いづらかったアイデアを、試してみたかった人。それぞれが、何かを持ち寄る場所として、Relabは開かれていく。
さて、7月20日に体験できることのハナシ
ここからは少しだけ、具体的な話をしよう。予定はまだ未定のまま走っているけれど、いまの時点で用意しているものたちを紹介していく。
◉ ギャラリーとホテル空間の内覧
建物はかつての町病院。外から見ると何でもないけれど、中に入ると町病院の入り口に提灯が置かれていて、創作の現場であるクリエイティブスタジオが姿を現す。居住空間のHOTELでは、思わず息をのむような日本庭園。手入れされた緑、流れる水、季節が映る障子の影。ここで創作をする、ここで一泊する、という未来をちょっとだけ想像してみてほしい。
◉ ファーストテイクのレコーディング体験
レコーディングって、何回も録り直すものだと思っていた。でも、「一発録り」のほうが面白いこともある。ミスしても、声が裏返っても、その日その瞬間の“空気”が録音される。そんな体験を、Relabの一室でこっそり準備している。
◉ 各種クリエイティブ制作の見学と体験
このスタジオでは、日々“何か”がつくられていく。たとえば、映像チームが回すカメラの先にある1分間の物語。デザイナーの手元でかたちになっていくロゴやフライヤー。誰かが口ずさんだ鼻歌から始まる楽曲づくり。普段は完成形しか見られないクリエイティブのリアルな裏側。その「どうやって作ってるの?」のすぐ隣に、今回は立てるようにしておく。見学だけでももちろんOK、興味があれば、少しだけ巻き込まれてみてもいい。「ただ見てるだけじゃもったいない」って、きっと思うから。
◉ 服づくりの現場見学
某セレクトショップでのデザイナーを担当し、新規事業の立ち上げまでやったあの5年の時間は僕にとっての宝物だ。相棒のミシンはまだまだ現役。デザイン、生地、縫製、服づくりに関する知識や、形にする能力は、そこら辺のデザイナーと比較したら申し訳ないが段違いだ。服ができる“前”と“途中”に触れられる、そんな創作の現場をご覧あれ。
◉ フォトスタジオでの撮影体験
おばあちゃんから依頼があった『写真を撮ってくれない?』の一言で始まったフォトスタジオでの撮影は、別に何かの記念日じゃなくてもいい。いまの自分を、ちゃんと残すという体験をして、写真に残す本当の価値を感じてもらいたい。

◉ ミーティングルームでの企画会議
「この古民家、どう使う?」そんな話を、語りあう時間も用意する。アイデアは、誰かが持ってくるものじゃなくて、ここにいる“あなた”が持ってきてくれるものだと思っている。前例のない古民家有効活用は僕一人で一人で創れるモノじゃない。様々なジャンルの人たちとお話をして、この古民家を起点に”春野町を旅する”をみんなでデザインしたいと考えている。

◉ 田舎でしかできない“外遊 び”体験
都会では味わえない贅沢が、ここにはある。
・静けさの中でととのうテントサウナ
・満天の星空の下、焚き火を囲んで語るキャンプナイト
みんなで焚き火を囲む時間があるとすれば、スマホの通知なんか無視させて田舎の外遊びを五感で体感させたい。何もしないことを“する”贅沢を、思い出してほしい。

まだ名前のない実験が、ここからはじまる。
Relabは、まだ未完成の場所だ。けれど、完成していないからこそ、自由にできる。
行政、企業、住民、アーティスト、子ども、
そして、名前のない誰かの声も。全部が交わっていく、町のちいさな交差点。
月一限定古民家開放イベントのRelabがついに動きはじめる。何が起こるかは、誰も知らない。それが、この実験のいちばん面白いところだから。
▼ 開催概要(予定)
日時:2025年7月20日(日)
時間:OPEN10:00〜CLOSE未定(出入り自由)
場所:
LIFE PROJECT GALLERY/HOTEL(詳細は個別にご案内)
入場:無料
対象:このプロジェクトに“何か”を感じたすべての人たちへ