#21『AI時代に“人間の仕事”は必要か?』
――”AIで人はいらない”論

「AIで人はいらない時代」? それ、本気で言ってる?
最近、「AIでな んでもできる時代になった」とドヤ顔で語る人が増えてきた。「だから人はいらない」「社員を減らせる」「クリエイティブすらAIで十分」――。たしかに、わかりやすい。耳障りもいいし、なんだか“合理的な未来”が来たような気がしてくる。
でもそれって、冷凍チャーハンをチンして「もう料理人いらないじゃん」って言ってるようなもんで。その人の“物語”や“背景”までは再現できない。たしかに「それっぽい味」にはなるけど、“それだけのハナシ”だ。

AIと“戦う”時代じゃない。正しく使う時代だ。
俺は、AIに仕事を奪われるなんてこれっぽっちも思っていないし、戦おうとも思っていない。だって、ノーベル平和賞を取る学者に匹敵するような知能指数を持った相手に、頭の良さで勝てるわけがないから。でも、負けた気もしない。そもそも“勝ち負け”の話じゃない。AIは「敵」じゃない。正しく使えば、最強の“エージェント”になり得る存在だ。誰よりも速く情報を集めて、誰よりも正確に 整理してくれる。
でも、その情報をどう使うか。どこへ向かうのか。何を選ぶのか。それは人間にしか決められない。

AIで効率化して浮かび上がる、“人間の本当の仕事”
AIの登場によって、人がいらなくなる?違う。「いらない人」じゃなく、「やるべきことを見失っていた人」が炙り出されるだけだ。
たとえば──
どこに向かうかを決める「問い」を立てること
誰の心を動かすのかを想像して設計すること
失 敗したときに、方向を変える“センス”を持つこと
「この人だから任せたい」と思わせる、関係性を築くこと
そんな“考える力”や“感じる力”こそ、人間の仕事であって、AIにはまだできない領域だ。
「AIがあるから人はいらない」なんて言ってる人こそ、実は超危ない。それは「洗濯機があるから、もうファッションいらないよね」と言ってるようなもので。道具と目的を、完全に履き違えてるなぁって。

創る人ほど、まず“聴いている”。AIにはできない対話力。
自分の仕事はよく「つくる人」だと言われる。たしかに、目に見えるアウトプットを出している。でも、実際にやっていることのほとんどは「相手のハナシを聴くこと」だったりする。
相手の話を深く深く聴いて、表に出てこない違和感をすくい上げたり、本人も気づいていない本音をかたちにしたり。話しながら何度も微調整をして、「本当にやりたいこと」を探っていくことでカタチにすべきものが明確にハッキリする。
つくるって、“一緒に考える”ことからしか始まらない。だから、ただ指示を待ってるだけのAIとは、根本から違う。「対話」こそが、創造の起点なのだ。
もうちょっと生活に寄せて言えば──行きつけの居酒屋に行く理由って、なんだろう。もちろん料理がうまいからってのもあるけど、結局、大将や女将の人柄だったり、空気感だったり、“この店が好き”って思える何かがあるからじゃないかな?
予約アプリで便利に選べるAIおすすめの店じゃなく、「なんか今日はあの店で飲みたいな」って思わせる、あの感じ。人が選ばれ るって、そういうことだと思う。

人がいらなくなるんじゃない。“ズレ”が見えてくるだけ。
だから初めに言ってた『人なんかいらない』とドヤ顔でかましてる奴らは気をつけた方がいい。AIの進化によって、確かに「人間の役割」が確実に変わる。でもそれは、「減る」んじゃなくて、ズレていた役割が正されるというだけだ。誰でもできることをこなして、満足していた仕事(ホワイトカラーの仕事は特に)は、なくなってしまうかもしれないが、誰かの心を動かすことに本気の仕事は、これからもっと価値を持つだろう。
やらなくていいことが減ったんじゃない。やるべきことが、くっきり浮かび上がってきただけだ。何を選ぶのか。誰と向き合うのか。どこまで本気で、誰かの心を動かせるのか。それは、どれだけAIが進化しても、“人間の仕事”であり続けるだろう。