#15 『スマホの次に来る世界』
―AI/VRでは届かない“人間の本能”の話

さて、今日のお話は、”10年くらい先のハナシ”なのかもしれない。自分がノリにノってる時、仲間内でハナシはするんだけど、あんまり公の場では言ってこなかったハナシ。これから先、未来がどうな るのかなんて誰も分からないけど、なんとなーく、ぼやーんと見えてはいる。
「ほら、やっぱ来たじゃんこの時代」って。
居酒屋の片隅で、ちょっとだけドヤ顔で仲間とグラスを合わせる。チンって。(乾杯)
そんな未来の夜を、僕はぼんやりと思い描いてる。

AIと仮想空間、そして“それでも残るもの”
いま、目の前にある技術の進化はめざましい。VRやARの仮想空間はどんどん精度を増し、どんな体験も仮想上で再現できるようになっていく。一方、AIは人間の創造性さえも超える勢いで、言葉も音楽も映像も「それっぽく」作れてしまう時代に入った。
つまり、これからの未来は「再現できないものなんて、ない世界」になっていく。
──だけど、どれ だけ“再現”できたとしても、“代替”できないものがある。
それが、「心を動かす体験」、「人と人が、空気ごと交わるリアルな空間」だ。

スマホの次に来る世界
スマホが普及したとき、誰も「孤独が増える」とは思わなかっただろう。
スマートフォンが広く普及し、SNSが当たり前になったとき、人々は「人とつながる自由」を手に入れた。物理的な距離を超え、日常を即座に共有できるようになり、いつでも誰かとつながっていられる感覚を得た。
だが、ふと立ち止まったとき、こんな声が聞こえるようになった。
「誰かと一緒にいるのに、誰も目を合わせていない」
「話しているのに、どこか上滑りしているような気がする」
テクノロジーは確かに“つながり”をくれた。でも“ぬくもり”はくれなかった。
そして、スマホの次にやってくるのが──VR・ARという、没入型の体験世界だ。

なんでも体験できる時代の、「逆説的な渇望」
VRのゴーグルをつければ、どこへでも旅ができる。ARのグラスを通して、現実世界に情報を重ねることだってできる。好きなバンドのアリーナライブだって、住宅会社のオープンハウスイベントだって、ゴーグルやグラスを付けちゃえばできるようになる嘘みたいな世界。それは確かに便利で、ワクワクする未来だ。
ただ、だからこそ、こんな問いだって生まれる。
「じゃあ、人間が“本当にしたい体験”とは何か」
「“リアル”じゃないと、満たされないものとは何か」
コロナ禍が教えてくれた、“リアル”への本能的な回帰
そのヒントは、2020年から始まったコロナ禍の数年間にある。感染対策により人との距離を取らざるを得なくなり、イベントも旅行も制限された中で、人々がこぞって向かったのはどこだ?──自然の中だ。
• キャンプ場の予約が取りづらくなった
• テントサウナが全国的に流行し、“ととのう”文化が日常のものとなった
• 子どもを連れて“焚き火ができる場所”を求める家族が爆増した
しかもこれは一時的なブームではない。
「人と離れたとき、自然に戻りたくなる」という人間の持つ本能的欲求があらわれた結果なのだ。つまり、テクノロジーから解放された瞬間に、人は“本物”を求め始めるのだ。
LIFE PROJECT HARUNOが目指す、“人と自然の再接続”
LIFE PROJECT HARUNOの活動とは、まさに人間の根源的な感覚を取り戻す体験の設計だ。
• 春野町の古民家を再生し、「時間がゆっくり流れる場」と「直接会ってお話をする機会」をつくって、シレっと提供する
• 子どもたちは川に飛び込み、大人たちは薪を割って火を囲むリアル体験の提供
• 日常の中の“しずかな奇跡”を写真に残し、「まんま写真展」で届けるワクワクと驚きの仕掛け
こうした体験は、仮想空間では絶対に完結しない。
「まんま写真展」も、きっと仮想空間でできるのだろう。だけど…

たとえば「まんま写真展」は、今後VR空間で開催することもできるだろう。写真を3D空間に配置し、ナレーションを添え、世界中からアクセスできるようにする──技術的にはもうすでに可能だ。
でも、僕たちは知っている。
人の心を動かすのは、“その空気に包まれること”である。ということを。
古民家特有の匂いだったり、目の前の世界だけじゃなくて、向こうから聞こえる薪割りの音、サウナであちぃあちぃ!と叫ぶ大人を包む、大きな笑い声が向こうから聞こえてきたり。
展示スペースに吹き込んでくる春の風。川の水の冷たさ。焚き火を囲いながら「うちもこうだった」「今度一緒にやらない?」と語り合う来場者同士のやりとり。
それが、“リアルな空気"で感じる情緒的価値であって、リアルとバーチャルの差異化ポイントであることを忘れちゃいけない。
SNSと一緒で、知るキッカケとしてバーチャル空間でまんま写真展を世界に向けて届け、行ってみたい!とさせるくらいがちょうどいいのかもしれない。

テクノロジーが進化するほど、“人間らしさ”の価値が上がっていく
これから、VR ・ARはますます日常に溶け込んでいく。学びも、旅も、出会いも、仕事さえも、「仮想」で完結する未来は目前にある。
だが、スクリーンの中にすべてが揃ったとき、人は必ず気付くのだろう。
「スクリーンの外に、何か本当に大切なものがある」ことに。
LIFE PROJECT HARUNOは、その“外側の人間の本質的な体験”をつくり続ける。
人と自然が混ざり合い、人の手によって生まれる、あたたかくて、面倒くさくて、心がほどける場所を大事に大事に育てていく。
さいごに|本物の体験が、心を起こす
町を起こすとは、設備を整えることでも、話題をつくることでもない。やっぱりどこまで行っても人の心を起こすことだ。そしてそれは、テクノロジーだけでは成しえない“本物の体験”を通してしか生まれない感情がある。
未来がどれほど便利になろうとも、LIFE PROJECT HARUNOは“本物の空気と感動”を信じて仕掛け続けていく。
春野町を舞台として、人間の感覚・本能が喜ぶ、そんな場所を。