プロダクトアウトで突き抜ける
― LIFE PROJECT“ゼロイチ”の挑戦 ―

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プロダクトアウトで突き抜ける
― LIFE PROJECT“ゼロイチ”の挑戦 ―
誰にも頼まれてないことばかりやってきた。

こんな展示があったら、きっと誰かの記憶に残るんじゃないかとか、誰も泊まりに来ないような古民家に面白い価値を生み出すことで、ほんの少し景色が変わるんじゃないかとか、浜松のアーティストが集まって、空き倉庫でお祭りをやったらすごいことになるんじゃないかとか。
そういう妄想(創造)ばかりがいっつも先にあって、「それ、儲かるの?」とか「ニーズあるの?」って鼻で笑われるのにもすっかり慣れちまった。そういうのって、やったことがない人ほどすぐ言ってくるもんだから仕方がないと思ってる。でも机の上で出せる正論ってのは、まじで現場で全然役に立たない。きっと、ゼロから何かを立ち上げる経験がないと、“何もない場所で手を動かすことの意味”は絶対にわからないんだろう。
だから僕たちは、それでもやってみた。ニーズがあるかどうかなんて、あとで知ればいい。ニーズがないなら、作っちゃえばいいじゃんってね。

春野町は、声にならない町だ。
「こうしてほしい」とか「これが足りない」とか、誰かが明確に教えてくれるわけじゃない。それでも、歩いていると感じる。この町には、まだ終わっていない物語があるって。もう一度ページをめくれば、きっと続きが書けるんじゃないかって。
僕たちは、マーケティングのプロでもないし、まちづくりの専門家でもない。
でも、創ることはできる。
想像して、形にして、誰かの心を動かすことは、誰よりもやってきた。だからできる。

マーケットインか、プロダクトアウトか
世の中ではよく、「ニーズを見てから動こう」「プロダクトアウトじゃだめだよ」と言われる。たしかに、合理的ではある。そもそもこの2つはどういう考え方なんだろう?
▷ マーケットイン(Market-In)
= 「求められていること」から出発する考え方
市場やお客さんのニーズを調査し、それに合ったものをつくる。例えるなら「今はタピオカが流行ってるから、タピオカ屋を出す」ようなイメージ。
▷ プロダクトアウト(Product-Out)
= 「自分たちがつくりたいもの」から出発する考え方
技術やアイデアをもとに、「こんなのあったら面白い」と先に形にしていくやり方。つまり、マーケットがあるかどうかは“あとで考える”。
当然だけど多くのビジネスでは、マーケットインが「正しい」とされる。でも、僕たちは地方の現場にいるから、こうも思う。
「じゃあ、“ニーズが聞こえてこない場所”では、何も始められないのか?」
人口が少ない。声が届かない。そもそも“需要”の調べようがない。そんな場所で、何もせずに待つことが正解だとはまったく思えなかった。

だから、僕たちはゼロイチを選んだ
LIFE PROJECT HARUNOのプロジェクトは、どれもゼロから始まっている。前例もないし、ニーズの数字も出てこない。でも、町を歩いて地元の人たちの声を聞いたときに「これがあったら、この景色は変わる」と思えた。だから、やってみた。
それは、たしかにプロダクトアウトかもしれない。でも、“意味のあるプロダクトアウト”だと思っている。ただの自己満足で作りたいだけの衝動でやってる訳 じゃない。そこに「誰も気づいていなかったけど、たしかにあった感情」を見つけて、形にすること。つまり、心のなかのニーズを掘り起こす作業だ。それが、僕たちにとっての“ゼロイチ”のものづくりだ。

「10→100」じゃなくていい。「0→1」の火を灯せばいい
世の中には、何かを「1→10」に広げたり、「10→100」にスケールさせたりする人たちがいる。それはとても大切な役割だ。でも、僕たちの役目はそこじゃない。1が生まれなかったら、ゼロのままだから。
何もなかった場所に、最初の火を灯すこと。誰かが見過ごしていた風景に、目を凝らし、その場所の“はじまりの形”を創り出すこと。展示でも、お祭りでも、古民家でも、言葉でも。それが大きなマーケットに育たなくたっていい。「心に届いた」と言ってくれる人さえいてくれればいい。そのひとつひとつが、この町の“まだ終わってない物語”を動かしていくのだと信じて。

最後に
「誰も望んでいなかったから、誰よりも望まれた」
この言葉が、今の僕たちの活動をいちばんよく表しているのかもしれない。最初は誰にも届かなかったかもしれない。けれど今、ほんの少しずつ誰かの中に火が灯っているのを感じる。だって、いま周りを見渡してみると、たくさんの協力者がいるから。これがきっと正しいんだろうなって。

だからこれからも僕たちは、静かに、でも確かに、ゼロからはじめる挑戦を続けていく。春野町という小さな田舎町の、まだ誰も知らない物語の続きを、一つずつ、じっくり創っていく。
"夢物語で頭がすっからかんのやつら"から"あいつらならやるかもしれない"という希望の光を照らす、そんな前代未聞の仕掛け屋を目指して。