top of page
LIFE ロゴ 黒.png

#2『伝える力の正体 』
──人が動く設計図のつくり方

情報を「どう伝えるか」の技術は、もう飽和している。SNS、動画広告、AIコピー。どれも精度は上がっているのに、なぜか心には届かない。本当に届く言葉って、誰かの頭の中に“風景”を浮かばせる。それがない言葉は、どれだけ正しくても心に残らないだろう。


たとえてみよう──

「低燃費・高性能の最新モデル」と言われるより、「家族との週末が、またひとつ楽しみになる。」の方が、車に乗る家族の姿が頭に浮かぶ。


「思考力・創造力を育むSTEAM教育カリキュラム」よりも、「今日もまた、“なんで?”が増えていく。」の方が、目を輝かせる子どもたちの表情が目に浮かぶ。


「業務効率を最大化するクラウド型プロジェクト管理ツール」ではなく、「やっと本来の仕事に集中できた」の方が、デスクに戻って深く息を吐く誰かの背中が思い浮かぶはずだ。


響かないのは、表現が足りないからじゃない。足りていないのは、“どう受け取られるか”を想像する力。言葉の意味じゃなくて、その先にある余白をつくること。ただ届けるんじゃなくて、“響くための設計”をすることだ。


伝える力の正体とは?

前回の記事で説明したように、行動経済学をベースに動く人を分解してみると、人は「納得」ではなく「納得感」で動くということがよく分かるはずだ。だから、“正しいこと”(理屈)をいくら並べても、まったく人の心は動かない。むしろ「なんかいいかも」「気になるなあ」「わかる気がする」──そう感じさせる順番や温度感が、人を動かす鍵になる。じゃあ、その「なんかいいかも」という感覚はどこから生まれるのか?


それがまさにインサイトの正体だ。



インサイトとは何か?

インサイトとは、相手の表層的なニーズや言葉の裏に隠された、深い心理的な欲求や感情のことを指す。表面に出てこない「本音」や「無意識の期待」、普段は気づくことのない「潜在的欲求」のこと。


たとえば──

「早く走れる靴がほしい」と言う子どもが、本当に欲しいのは“クラスで一番になりたい”という誇りだったり、「この家、リビングが広くていいね」と言う母親の本音は、“家族みんなが自然と集まって笑顔で過ごせる空間を作りたい”という願いだったりする。


広告やメッセージが、ただ正しい情報を伝えるだけでは届かないのは、このインサイトを捉えていないから。人は理屈で動くのではなく、自分の心に響く“気づき”や“共感”を感じた時にはじめて動く。だからこそ、伝える側は「相手の心の奥深くにあるインサイトを見つけ、そこに語りかける設計」が必要になる。


3. 人が動く設計図の4つの要素

共感を生むストーリー

ストーリーは単なる情報の羅列ではない。人の感情を揺さぶり、心を動かす最大の武器だ。人は物語を通じて自己投影し、登場人物の感情や体験に共感することで初めて「自分ごと」として受け止める。ここで重要なのは、ストーリーがインサイトに寄り添っていることだ。相手の心に潜む「なんとなくモヤモヤしている気持ち」や「まだ言語化されていない欲求」に響くからこそ、共感が生まれ、行動に繋がる。よくある「すごいっすねえ」「やばいっすねえ」っていうリアクションを、都合よく勝手に共感されたとカウントする人たちがいるけど、それはただの社交辞令だから特に気を付けて。


明確なメッセージ

いくら素敵なストーリーがあっても、伝えたいメッセージがぼやけていたら意味がない。曖昧な表現は相手の判断を鈍らせ、行動への一歩を遠ざける。だからこそ、「誰に向けて」「何を伝え」「どんな行動を促したいのか」を明確に示す必要がある。ターゲットのインサイトを踏まえた上で、メッセージを組み立てることが必須だ。


具体的な行動を促す導線

ただ伝えるだけではなく、次に“何をすればいいか”が明確に提示されて、はじめて人は行動する。LIFE PROJECT HARUNOの《古民家プロジェクト》でも、それは意識的に設計されている。“レントゲン室”でのファーストテイクだ。もともとは遊びの延長で、音楽活動もしていないただの男が、古民家の一角でカラオケを撮って発信しただけなのにも関わらず、

「この雰囲気でぜひ撮影したい」
「レコーディング合宿をここでやりたい」
「生徒を連れて来て音楽体験をさせたい」

──お金を払ってでもやりたいという、音楽関係者からの声が上がり、次々と“行動”が連鎖していった。大事なのは、単に場所を紹介することではなく、「どう関わればいいか」が自然とイメージできる構造があるかどうか。人は、行動のきっかけがあっても、「どうすればいいかわからない」とそこで止まってしまう。だからこそ、プロジェクトの設計段階から、「どこで心が動くか」「その瞬間に、どんな選択肢を提示すべきか」を考えておく必要がある。「伝える」だけで終わらせず、「動きたくなる導線」をつくること。それが、“共感”を“参加”へ変えるということだ。


信頼の構築

どんなに良いメッセージでも、信頼がなければ人は動かない。信頼は「この人・この企業は信用できる」と感じてもらうこと。実績や第三者の声(口コミ、推薦)、透明性の高い情報開示などを通じて信頼感は積み上げられる。信頼が構築されていれば、相手は安心して行動を起こせる。信頼のないメッセージは空回りし、心に届くことはないだろう。


4. 伝わる設計図の実例紹介

LIFE PROJECT HARUNO(町起こし活動)
LIFE PROJECT HARUNO(町起こし活動)

LIFE PROJECT HARUNOは、地域の魅力を伝える写真展や、古民家再生プロジェクトを通じて、共感と信頼を生み出すストーリー設計を行っている。単なる情報発信ではなく、参加者が自然に動き、ファンになる仕組みを設計している。


Neuf productionでは、企業の広報・ブランディングに「伝わる設計図」を取り入れたトータルクリエイティブを提供している。行動経済学を踏まえたメッセージ設計や行動導線設計を実践し、クライアントの求める成果の最大化を目指している。



5. まとめ

伝える力とは情報を届けることではない。相手の心を動かし、自然に行動を促すための設計図を描くことだ。

共感を生むストーリー
明確なメッセージ
具体的な導線
信頼構築

この4つを意識すれば、伝える力は格段に強くなる。そして、そのすべての土台にあるのが「インサイト」の理解だ。そこに語りかけるからこそ、「なんかいいかも」「わかる気がする」といった感覚が生まれ、人は初めて心を動かされる。


伝わるだけで終わらず、人を動かす伝え方には、このインサイトを見極め、深く共感を生む設計が欠かせない。今日からは、自分のメッセージにインサイトを組み込み、この設計図を意識してみるといいだろう。


圧倒的な成果は、そこからしか生まれない。



次回予告

Vol.03『人が動く映像の力』〜見せかけじゃない伝わる映像〜

Neuf Production 平山了将(お仕事モード)

『東京ガスのCMが描く』
──機能ではなく、“感情”を届ける広告

『AmazonのCMが描く』
──“人の時間”という価値に気付く広告

#5『心を動かす、という企て』
── 考察する、広告の秘密

#4『心を動かし、行動を促す』
──「しかけ」と「しかた」の話

#3『人が動く映像の力』
〜見せかけじゃない伝わる映像〜

#2『伝える力の正体 』
──人が動く設計図のつくり方

#1『伝わらない理由』
── 行動経済学のアプローチ

『仕事のハナシシリーズ 開幕』
──伝える→伝わる仕組みの開発

『東京ガスのCMが描く』
──機能ではなく、“感情”を届ける広告

『AmazonのCMが描く』
──“人の時間”という価値に気付く広告

#5『心を動かす、という企て』
── 考察する、広告の秘密

#4『心を動かし、行動を促す』
──「しかけ」と「しかた」の話

#3『人が動く映像の力』
〜見せかけじゃない伝わる映像〜

#2『伝える力の正体 』
──人が動く設計図のつくり方

#1『伝わらない理由』
── 行動経済学のアプローチ

『仕事のハナシシリーズ 開幕』
──伝える→伝わる仕組みの開発

『東京ガスのCMが描く』
──機能ではなく、“感情”を届ける広告

『AmazonのCMが描く』
──“人の時間”という価値に気付く広告

#5『心を動かす、という企て』
── 考察する、広告の秘密

#4『心を動かし、行動を促す』
──「しかけ」と「しかた」の話

#3『人が動く映像の力』
〜見せかけじゃない伝わる映像〜

#2『伝える力の正体 』
──人が動く設計図のつくり方

#1『伝わらない理由』
── 行動経済学のアプローチ

『仕事のハナシシリーズ 開幕』
──伝える→伝わる仕組みの開発

bottom of page