#4『心を動かし、行動を促す』
──「しかけ」と「しかた」の話

僕らが関わるプロジェクトで、常に意識しているのが「人が動く設計」。それはなにも大げさな仕掛けや、強い言葉の演出ばかりじゃない。むしろ、人は自分でも気づかないうちに “何かに動かされている”。とある動画を見て心がざわついたとき、なぜか気づけば参加していたイベント。その背後には、"無意識をくすぐる「しかけ」と「しかた」"があったりする。

行動は「無意識」で動いている
人の意思決定の多くは、実は「自分で選んだ」と思っていても、実は環境・習慣・感情・周囲の目といった“無意識の力”によって決まっている。
コンビニに入って左に曲がるのは、照明と棚の配置のせいかもしれない
何気なく手に取った商品は、実は視線誘導による「ナッジ」かもしれない
このように、人は環境に設計されて動いている。そしてその設計は、ビジネスにも、まちづく りにも、広告にも応用できるというワケだ。

感情が動くと、人は動く
行動を動かすもうひとつの要素が「感情」だ。これは単純な“感情的なコピー”という話ではなく、心がふっと動いた瞬間にだけ、行動の引き金が引かれるということ。
たとえば、広告でいうとこうなる。
「ターゲットに刺さる」より、「自分のことのように感じる」方が強い
ストーリーや違和感があると、感情は記憶に変わる
一貫性よりも、“不安定な余白”が人を引きつけるときもある
「感情を動かす広告」には、見せかけの綺麗さではなく、“どこか気になる”、“なんか覚えてる”という不思議な余韻がある。


考察したくなる広告は、仕掛けの宝庫
最近、思わず考察したくなった広告がある。パッと見はシンプル。でも、何かが残る。
例えば──
テキストの言い回しが“断定していない”のに強い
映像に“言い切らない余白”がある
すべてを説明していないことで、逆にストーリーを膨らませてしまう
そういう広告には、「これって何だろう」と思わせる意図的な“違和感”がある。この“違和感の設計”こそ、行動経済学でも心理学でも最も難しく、そして面白い領域だ。
「動かす」ではなく「動いてしまう」へ
僕らが目指したいのは、「見せて動かす広告」じゃない。「気づけば動いてしまっていた」と思わせるような、無意識のしかけであり、「ずっと心に残ってる」と後から言われるような、余韻のあるしかただ。それは、仕事でも、地域でも、日常の声かけでも実は全部同じ。大事なのは、『見た目の良さではなく、“行動の設計”と“感情の余白”』なのだ。
次回は、そんな“考察したくなる広告”をいくつか取り上げながら、心に残る広告の仕掛けについて、もう少し具体的に掘ってみたいと思う。
#5『心を動かす、という企て』── 考察する、いい広告の秘密
Neuf Production 平山了将(お仕事モード)