『来場者が“のぞく”高さの話』
──まんま写真展の舞台裏 #04

「展示の机、なんか高くない?」写真展に来た人のうち、何人かはきっとそう思う。でも、大多数の人は、言葉にしないまま自然と背伸びをして、写真をのぞきこむ。それでいい。それが、狙いだから。

この展示台、実は普通の展示台より20センチ高くつくってある。市販のものじゃなく、自分たちで設計して、木材を調達して、仲間と一緒に組み立てた展示台だ。

20センチの高さを設けた理由はただひとつ。“写真をただ眺める”という受動的な時間じゃなくて、“体をちょっとだけ使って関わる”能動的な時間に変えたかったから。
展示しているのは、今までのまんま写真展のハイライトの写真たち。まんま写真展を見に来てくれたいろんな人たちや、僕たちと話してる写真を、見やすい目の高さで見るんじゃなくて、のぞきこむように見てもらいたかった。
すると、不思議なことが起きる。背伸びして見る親の姿、抱き上げられて一緒に写真を眺める子ども。見ている人たちって、展示そのものより、その“周りで起きる光景”の方が記憶に残ったりする。
僕らが本当に見てほしいのは、展示された作品そのものじゃない。その作品を見てる“来場者”の姿だ。この展示は、参加型でも、体験型でもない。でも、来場者を展示の“中”に入れてしまう仕掛けが、実はちゃんとあったワケだ。

そしてその仕掛けは、わざわざお金をかけるものじゃない。“たった20センチの高さ”で、人の行動も感情も、まんま写真展を見に来た人たちの姿も、そっと変わる。
数字や設計図だけで見てたら、この机は「非効率」で「重いし、組み立ても面倒」って言われて終わりだと思うけど、合理的な判断のさらに向こう側にあるものがあったりするわけで。それこそが、人の心を動かす仕掛けの正体なんじゃないかと、僕らは思ってる。
町起こしの仕掛け屋としてこだわる部分は机の見栄えの良さよりも、来場者の姿。前のめりになって見てる自分の姿や、抱っこして子供と一緒に見てる姿が、また次の”まんま写真展”で、ハイライト写真として展示されていくのだから。
次回予告
『合理的?いや、風景を信じてみたハナシ』 ──まんま写真展の舞台裏 #05