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『すべての始まり』
──まんま写真展の舞台裏 #01

時計の針が、3時を指していた。静かな部屋、眠らない画面の向こうに、仲間の顔が並んでいる。カメラ越しに聞こえる深夜の笑い声と、たまに途切れるWi-Fiのせいで何度も聞き返す会話。そんな、不思議と心地いいノイズの中で、幾つものアイデアが転がり出た。

「仕掛けを一発で終わらせない、数年後に伏線回収するようなプロジェクト、仕掛けを」
「じぶんたちの手でやれること、もっとあるよな?」
「”感動しちゃう”って涙流す人が出てこなきゃ」
「文化センターで形にできないかな」…。

たぶん、あの時はまだ、誰も正解なんて知らなかった。でも、誰かの心をちゃんと動かしたいっていう気持ちだけは、みんなの中に確かにあった。そうして生まれたのが、「まんま写真展」だった。


展示っていうと、すでに出来上がってる立派なギャラリーとか、パネルも照明もピシッと揃った空間を想像するかもしれない。でも、僕らがやりたかったのは、そういう“お金掛けました感全開の展示”じゃなかった。

どこかの誰かの“まんま”を、僕たちの出来る形で、そのまんま届けながら、ただの体育館みたいな場所に特別な時間を作り出す仕掛け。




上空から茶畑にピントを合わせた空撮写真、怒られて裸足で泣きまくってる愛おしい子供の顔、テントサウナで遊び狂う大人たち、田舎町の風景を守りたいというメッセージを込めた写真。そういう”今のまんま”が、ただ並んでるだけの写真展。


ここで一つ仕掛けがある。会場のパネル配置についてだ。

会場中央に4面パネルを用意し、上手には仲間の人たちの展示パネル、そして奥に4M×3Mの特大ビジュアルのパネルを設置したのだが、この配置にした理由は2つある。

文化センター 動線図面(来客・カメラマン)
文化センター 動線図面(来客・カメラマン)

1.会場中央にひし形で設置した4面パネル

会場中央に4面パネルをひし形状に設置することで、4面パネルを軸として会場全体に行き渡る来客動線が完成。来客動線がはっきりすることによって、写真展中の動画撮影(ワンオペカメラマン)をする際の負担軽減と、写真を見てる人と展示写真の構図が決まりやすいワケだ。


2.扉を開けた瞬間に飛び込んでくる奥手の特大パネル

奥手に特大パネルを仕込むことによって、会場の扉を開けて、入ってきた時のワクワクと驚きを演出。会場に入った瞬間の第一印象で、心を鷲掴みにする作戦だ。4面パネルをぐるぐる回ってから、またこの特大パネルを見て、上を見上げてぼーっとする人たちが続出。


仕掛け人としてはっきり言うが、主役はあくまで来場者だ。

作品見てくださいの自己満展示だけじゃ『自己満足っしょ?のドヤ顔野郎ども』を黙らせることはできない。だからこそ、仕掛けを考え、動線すらデザインする必要がある。

ここまでやることによって、来場してくれた人たちが真剣に写真と空間に向き合ってる瞬間や、僕たちと笑いながらコミュニケーションをとってる姿を、グッと写真を見て、来場者に届いてる瞬間を、カメラに収めることが可能になるのだ。


そもそも、地域で何かやろうとすると、必ずと言っていいほどいろんな「できない理由」にぶつかる。お金がない、スペースがない、許可が下りない、前例がない。でも、だからって何も動かなかったら、新しい風が吹くことは絶対になかっただろう。だから僕らは、“できる”から始めなかった。“やる”って決めてから、“自分たちでどうやるか”を探し続けた。

あの真夜中のZoom会議が、すべての始まりだった。眠気と熱気が混ざったような、あの夜の記憶。まんま写真展という名の最初の「仕掛け」。


次回予告『答えは今じゃない、もっと先にある』 ──まんま写真展の舞台裏 #02


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